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『チャリング・クロス街84番地 書物を愛する人のための本』 [文献]

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副題を見ても分かるように、本書は郵趣本ではありません。
有名な本なので、読まれた方もいらっしゃると思いますし、映画にもなっています。(日本では劇場未公開ですが、DVD化はされています)

画像は、日本語訳版の初版ですが、文庫化されたのが新本としてアマゾンなどから入手できます。

本書は、米国・ニューヨーク在住のヘレーン・ハンフが、英文学を中心とした絶版本を入手するために、ロンドンのチャリング・クロス街84番地にある「マークス」という古書店との間に交わした、20年にもわたる書簡集です。

最初は、1顧客としての普通の注文書から始まりますが、注文を重ねるうちに担当者であるフランク・ドイルという店員と打ち解け合い、手紙の中で軽口を叩き合う交流が始まり、そして程なく、他のマークス社の社員や、時としてその家族をも含んだ交流へと発展して行きます。

本来、切手商と収集家との間にも、似たような形があったものと思います。
つまり、切手商と上手く付き合う収集家ですね、
eBay全盛の今、切手商と濃密に付き合う人が著しく減ったと思います。
もちろん、僕もebayを積極的に利用はしていますが、それだからと言って、昔から付き合いのある切手商との付き合いは止めていません。

例えば、パリのある切手商は、昔ながらなので今でも手紙のやり取りに、決済は郵便局からの為替送金です。
確かに不便ではありますが、付き合いというのは、お金とか合理性に追求できるものだけではありませんからね。

本書は、特にイギリス切手を集めている方にはお勧めです。
例えば、1950年頃のイギリスは食料不足で配給制が続き、女性はストッキングの入手にも苦労していることなど、社会史的な側面を知ることができます。
ヘレーン・ハンフは、マークス社の社員とその家族のために、頻繁に米国からそれらの品々を送っているのです。
米国の豊かさと、戦勝国ではあるものの経済の疲弊したイギリスの対象も本書から読み取ることができます。

僕が本書を入手したのは中学の時でしたが、それ以来、何度も読み返しています。
価値のある本です。
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