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『切手商になる迄』 [文献]

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切手商の思い出話をまとめた本と言えば、世界的には『ナッソー・ストリート』が有名だし、日本では西岡氏の『切手商売六十五年』がよく読まれています。

本書の著者はルドルフ・フリードル氏で、20世紀初頭のウィーンで有名な切手商人。
今では、ヨーロッパの郵趣の中心地と言えばロンドンとパリですが、戦前ではウィーンも郵趣の中心として有名でした。

本書は文庫本サイズで25ページという薄さ。
しかも見開きで左ページに原文を、右ページに日本語訳を掲載しているため、実質はその半分の本文量しかありません。

本書には、著者が収集家であった19世紀後半の郵趣界の様子も触れられており、当時は子供でも珍品を除けば、ヨーロッパ全体のまとまったコレクションを作ることが可能であったことなど、今となってはウソのような時代であったことがわかります。

また、あのフェラリ伯爵との交友についても触れられています。
フェラリが、切手商から偽物も言い値で買い取っていた有名な話についても「偽切手を市場から引き上げて、経験の少い蒐集家に損害を蒙らせる機会を、切手商から摘むため」であったと証言していますし、フェラリの横顔についても触れられています。

本書は、小本ではありますが、今となっては中々知ることができない、百数十年も前の生のヨーロッパ収集界について知ることができる、貴重な一書ではないでしょうか。
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