『図説・戦前記念切手』 [文献]
先日、著者からサイン入り本をご恵贈いただきました。
著者の原田氏は、競争展に多く出品するという、いわゆる露出度の高い派手な収集家ではありません。
ですから、氏の収集内容をご存知の方は少ないと思います。
氏のコレクションを一言で表現するならば「流行に左右されない土台のしっかりとしたコレクション」でしょう。
部分的に見せていただくコレクションは素晴らしく、驚きの連続です。
その根底にあるのは、年季と地道さだと思います。
また、氏の鼻は収集のためにあるがごとく、掘り出し物の匂いをかぎ分け、一体なんでこんなものが入手できるのかと思うようなマテリアルを、いつの間にか入手されています。
そんな氏が執筆されたのが本書。
どのページを見ても美しく、素晴らしい図版が目白押し。
なにしろ「ビジュアルヒストリー・シリーズ」ですからね。
内容は平易でありながら、考古学・歴史学の専門家ならではの濃いもので、特に図版を拡大しての図案説明は、多くの収集家が初めて理解、納得したものと思います。
僕は6ページに示されている、明治銀婚記念切手発行を即す英字新聞の記事を、恥ずかしながら初めて見ました。
この新聞記事は、明治銀婚記念切手の解説には必ずと言ってよいくらいに紹介されていますが、不思議と今まで図版として提示はされていませんでした。
本書で、初めてこの記事を見た方は多いのではないでしょうか。
また、各所に散りばめられている氏のリーフ画像を見ると、決して流行に左右されずに自分で考えて遊び場を作っていく氏の姿勢が見て取れると思います。
こうした、収集上重要な姿勢も本書は教えてくれます。
本書は、今年一番の楽しい本でした。
定価2000円+消費税。
2016-08-29 15:06
コメント(3)
各切手の紹介が、カタログ的な時系列がありつつも、テーマ別で集約して、同じ題材での歴史の前後関係が分かり、大変分かりやすく、勉強になりました。
おっしゃる通り、知識の提示だけでなく、実際の集め方までの示唆があるので、初学でも楽しめる本でした。ある意味、二兎を追ってそれが成功しているのが凄いと思いました。
by えのさわ (2016-08-30 10:29)
えのさわ さん
お久しぶりです。
ホント、久しぶりに厚みのある、完成度の高い文献に出会えたと思いますね。
今の日本切手関係の収集家で、あのような内容が書けるのは原田氏だけだと思います。
by stamp (2016-08-31 20:26)
図入りアルバムの穴埋めを楽しんでいる者です。郵趣手帖の収集日誌も楽しんでいます。この本が面白そうだと思い購入して読んでいましたが、あるところで止まってしまいました。29ページ、『切手収集の世界では、1インチ(約2.54cm)に幾つの孔があるかを測って・・・』とあります。20mmではないのでしょうか。このまま読み進めていいものか・・・
蛇足ですが、Wikipediaには、『新聞などで「1インチ(約2.54cm)」などという記述が今でも見られるが、国際インチにおける1インチは正確に2.54cmであり、「約」という表現は不要かつ不適切である。』とあります。
by 匿名希望です (2016-10-16 10:22)